美容業界が抱える課題とは?美容室・サロンの今後の動向も解説
2022年8月31日
美容室の経営においては、利益率が売上よりも重要で、利益率を分析して経営状態の改善を図ることが、安定した美容室経営には不可欠です。
今回は、美容室の利益率の目安や種類、計算方法などをご紹介しながら、分析のポイントをご紹介します。
目次
企業の売上に対する利益を示す「利益率」は、分析する目的に応じて複数の種類が存在します。
美容室の経営状況を分析する上で重要な3つの利益率について、以下でご紹介します。
「売上高総利益率」は、売上総利益に対する売上の割合で、粗利益率とも呼ばれます。その名の通り、経費を含まない売上と原価だけの指標による利益の指標で、売上と原価のバランスを分析することができます。
計算式は、
売上高総利益率(%)=売上総利益(売上₋原価)/売上×100
で示すことができます。
上記の式より、(売上−原価)の分子の指標が大きいほど良いため、売上高総利益率(%)も大きいほど良いとされています。
「営業利益率」は、売上に対する営業利益の割合であり、先ほどの粗利益が諸経費を考慮しなかったものであるのに対して、この利益率の考え方は、諸経費を差し引き、企業の「儲け」を示します。
計算式は、
営業利益率(%)=営業利益/売上×100
で表すことができます。
営業利益=売上総利益−(販売費及び一般管理費)
販売費及び一般管理費=家賃、人件費、材料費、水光熱費、雑費などの営業するにあたりかかった経費
「営業利益率」が高いほど、売上に対する営業利益が高いことが分かります。そして、営業利益が高いことは、売上総利益が高く販売費及び一般管理費が低いことが分かります。つまり、利益を出すために経費が掛かっていない経営状態で、収入と支出のバランスが良いことが考えられます。
「経常利益率」とは、売上に対する営業利益と営業外収益の和から営業外費用を引いたものの割合です。
計算式は、
経常利益率(%)=(営業利益+営業外収益−営業外費用)/売上×100
として表すことができます。
営業外収益=美容室の営業以外のセミナーや専門学校などの非常勤講師、SNSからなどの収益
上記の「経常利益率」が高いほど、全体の売上に対して営業外収益が高いことが分かります。言い換えると、「経常利益率」が高いということは、本業である美容室の営業で稼げていないことが分かります。
では、ここまでご紹介してきた3つの利益率について、目安と具体的な計算方法をご紹介します。
業種によって売上高総利益率は、原価や適正利益が異なるため変わってきますが、美容業の場合の目安は約80~85%程度で売上と原価のバランスが良好とされています。
以下に売上高総利益率の式を示し、試算してみます。
<美容室Aの売上高総利益率の試算>
・1か月の売上:100万円
・原価(パーマ・カラー剤などの消耗品等):30万円
売上高総利益率(%)=(100万円−30万円)/100万円=70(%)
一般的な美容室の営業利益率は7~10%程度であれば、売上と経費のバランスが良いとされています。
以下に営業利益率の式を示し、試算してみます。
<美容室Bの襟業利益率の試算>
・売上:100万
・売上総利益 80万
・販管費及び一般管理費:家賃20万、人件費35万、材料費8万、外注費2万、水光熱費3万、雑費2万、広告宣伝費5万=計75万
営業利益率(%)=80万−75万/100万=5(%)
経常利益率は、高いほど本業で利益が取れていない経営状態を表します。
以下に経常利益率の式を示し、試算してみます。
<美容室Cの経常利益率①の試算>
・売上:120万
・営業利益 80万
・営業外収益120万
・営業外費用20万
経常利益率(%)=(60万円+60万円−20万円)/120万円≒83.3(%)
次に、上記で試算した各利益率を見て分析してみましょう。
美容室Aの試算結果は、
売上高総利益率(%)=(100万円−30万円)/100万円=70(%)でした。
これは、一般的な売上高総利益率である80~85(%)よりも、10ポイント以上低いことが分かります。
内訳として、原価が比較的高いため(一般的な美容室の原価率は10~20(%)と言われている)売上に対して原価が高く、売上高総利益率が低くなっています。その対策としては、原価率を下げる手法を取らなければなりません。
美容室の原価率を下げる具体的な手法は以下のようなものです。
①美容材料のサイクルを長期化させる
②材料などの仕入れ量を美容ディーラーに交渉し、掛け率を低く設定してもらう。
美容室Bの営業利益率の試算結果は、
営業利益率(%)=80万−75万/100万=5%
であり、理想とされる10%程度よりも約5ポイント低い結果になりました。
そこで、販管費及び一般管理費=計75万(家賃20万、人件費35万、材料費8万、外注費2万、水光熱費3万、雑費2万、広告宣伝費5万)の内訳を確認してみます。
一般的な美容室の経費の内訳(費用が大きいもの)は、経験値において
であるため、
前記の仮定では、売上100万円に対し家賃20万円(20%)、人件費35万円(35%)、材料費8万円(8%)であり、家賃の割合が高く、次いで材料費の割合も若干高いことが分かります。
長期的な視点では、家賃の高さがネックとなってくるため、店舗の移転を検討する必要があります。(営業を始めてからの賃料交渉は難しいため)
また、短期的な視点では、材料費の割合も若干高いことから、スタッフでの在庫管理やPOSシステム導入により、材料ロスを縮減していく必要があります。
美容室Cの経常利益率の試算結果は、
経常利益率(%)=(60万円+60万円−20万円)/120万円≒83.3(%)でした。
数値としては、比較的高い傾向にあると言えます。営業外の収益が下がれば全体の売上(利益)も下がりますが、全体の売上に対する本業の割合は高くなります。
この点から、本業の美容室経営で売上を伸ばすために、営業外の収益からどう結びつけるかが大切です。
例えば、YouTubeなどの動画で収益を得ている場合、美容材(シャンプーやワックスなど)の使用評価動画から、自身の店舗のサイトにつなぎ、店販へとたどり着くような工夫を行うなど、営業外収益を上げている利点を生かしながら、本業も増える仕組みを検討します。
もしくは、営業外収益に割いている時間を、営業時間に回すなどの検討も場合によっては必要かもしれません。
各利益率の分析を試算により行ってきましたが、分析を行った後は、改善のアクションを起こすことが大切です。
例えば、粗利益率が低い場合は、どの部分で改善が必要なのかを洗い出します。
売上が高くても、原価が高い場合は薄利多売の経営状況に陥っている可能性があり、以下のような問題点を洗い出すことができます。
問題点を洗い出したら、具体的な対策を講じ、小さなことでも良いので実行します。
例えば、
・材料の掛け率が一般より高い
→(対策)美容ディーラーに来月からの入り値を相談
・無駄に在庫を抱えている(在庫管理ができていない、アバウトである)
→(対策)POSシステムを導入し、材料残量を明確にして、発注サイクルを長期化する
・よく出るメニューの原価率が一番高い
→(対策)よく出るメニュー(特殊カラー)の材料の掛け率を美容ディーラーに相談する
・客単価が高いメニューのオーダーが少ない
→(対策)客単価が高いメニューのオーダーが増えるよう、積極的にカウンセリングを行い、顧客の悩みに合致した場合に提案する
以上のように、利益率を分析した後には、問題点を洗い出し、具体的な対策を立案・実行していくことが必要です。そして、その効果を確認してさらに改善していくことで、利益率の向上、つまり、美容室の経営改善につなげていくことができるのです。
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